最高検察庁、『幻の記者会見』を開く。

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    大林宏検事総長


     10月21日17時、最高検察庁は同庁20階大会議室で記者会見を開いた。

     この日の会見は、大阪地検特捜部の証拠品改ざん・隠ぺい事件に関して、前特捜部長・大坪弘道被告人と元副部長・佐賀元明被告人の2名を犯人隠避の事実で大阪地方裁判所に公判請求したことを受けてのものだ。

    (※管轄の関係上、最高検察庁は本日、大阪地方検察庁に事件を移送し、これを受けた大阪地方検察庁が同日、大阪地方裁判所に公判請求した)

     最高検側からの出席者は八木宏幸刑事部検事、伊藤鉄男次長検事、大林宏検事総長、池上政幸刑事部長の4名。


     しかし、この記者会見で撮影が認められたのは、大林宏検事総長の冒頭発言部分(2分間)のみ。それ以降の質疑応答部分(約50分)は会場からカメラマンが退席させられ、一切の撮影、録音が禁止された。


     おかしい。「記者会見」なのに質疑応答部分の記録ができない。会見要旨も残らない。これは大変な損失ではないのか。


     それどころか最高検の事務方は、会見が始まる前に繰り返しこう言った。


    「当方も会見の録音は行ないませんので、録音はご遠慮下さい」


     公の場であるはずの記者会見が、なぜオフレコなのか。それどころか、会見の要旨も残されないのか。


     こうなったら必死にメモするしかない。私は約1時間の記者会見中、キーパンチャーとなって必死に会見での言葉を入力した。会見場で検察版「ツダリンピック」(http://tsudalympic.jp/)をやっていたわけだ。


     後半になればなるほど、疲れとともに入力が覚束なくなることは目に見えている。そこで最前列に座っていた私は質疑応答の一番最初に質問した。


     そのやりとりは次の通り。入力後に変換しているヒマがないので全部「ひらがな」で入力した。しかし、「ひらがな」のままだと話している言葉が幼稚に見える。それは申し訳ないので、後から漢字に直したものを載せた。

     ちなみに私の最初の質問が漢字なのは、予めパソコンにメモしていたからだ。

    (※どれほど幼稚に見えるか、最初にメモ書きをそのまま載せ、後半に漢字を入れたものを載せた)


    畠山:フリーランスの畠山と申します。記者会見のことでうかがいます。会見の質疑応答部分の録音や撮影を認めないと情報が正確に伝わらない可能性があります。なぜ録音や撮影を禁止するのか。それとも、我々記者は情報を改ざんする可能性がないと信頼されているのか。その認識をうかがえればと思います。


    【原文メモ】

    いとうじちょう:あのー、げんそくとしてぼうとうだけでやっています。あのー、かめらいれてろくおんはですね。それはやっぱりあのー、へんしゅうとうされることによってそれがせいかくにつたわらないということをいちばんきぐしているわけです。たとえばほうそうにせよ、そういう、なまのこえであれば、まあ、それじたいは、ふつうのひとにはしんらいがたかくなるわけですけれども、それをこう、かっとしてしまえばですね、われわれがいっているほんいでないことが、ことばとしては、そこだけでだされてしまう。まあそういうようなこともありましてですね。この、できるだけわれわれとしてもおおくのことをていねいにせつめいしたいということもあってですね、このぶぶんは、あー、かめらをいれたりろくおんをしないということでやっているところでございます。


    【漢字を入れたもの】

    伊藤鉄男次長検事:あのー、原則として冒頭だけでやっています。あのー、カメラ入れて録音はですね。それはやっぱりあのー、編集等されることによってそれが正確に伝わらないということを一番危惧しているわけです。たとえば放送にせよ、そういう、生の声であれば、まあ、それ自体は普通の人には信頼が高くなるわけですけれども、それをこう、カットしてしまえばですね、我々が言っている本意でないことが、言葉としては、そこだけで出されてしまう。まあそういうようなこともありましてですね。この、できるだけ我々としても多くのことを丁寧に説明したいということもあってですね、この部分は、あー、カメラを入れたり録音をしないということでやっているところでございます。


     どうだろう。読みにくくはなかったか。

     録音を許可したり、会見要旨を残したりしないと、こういうみっともないことになる。


     もう一つ、この記者会見では質問者との激しいやり取りもあった。

     質問したのはフリージャーナリストの江川紹子さん。まだ私の集中力が残っている時点での質疑応答なので、ほとんどメモできたと思う。

     全部平仮名だと読みにくいため、こちらは後から漢字を入れたものだけ記す。


    江川:フリーの江川と申します。まず事実関係のことについてうかがいたい。公訴事実の要旨の中の、1というのがありまして、そこで、3カ所、「指示し」というのが出ております。それぞれの「指示し」というのは、誰がどこで指示をしたのでしょうか。先ほど次長が細かいことはうんぬんとおっしゃいましたけれども、どうせこんなことは公判前の整理手続きで出るような話なので、それぐらいは明らかにして下さい。

    八木宏幸刑事部検事:えー、あの、発表文に書いてある内容の限度でしか申し上げられないのですが、えー、指示した場所につきましてはこの事実の中で伝えている通りでありまして、えー、大阪地方検察庁…。

    江川:の、どこですか。

    八木宏幸刑事部検事:その場所ですか?

    江川:検察庁の中のどこですか?

    八木宏幸刑事部検事:検察庁の中で、というしか、今の段階では申し上げられないという主旨であります。

    江川:なんで?

    八木宏幸刑事部検事:ま、まさに証拠の中身になるからです。

    江川:そんなものは証拠開示で出るじゃないですか。どっちみち。

    八木宏幸刑事部検事:それは弁護人の方に証拠開示はいたしますけれども、第一回公判前まではクローズの状態でございまして、中身は弁護人には開示しておりますが、その開示の内容につきましては公表しているものではございません。

    江川:なぜ公表出来ないんですか。

    八木宏幸刑事部検事:第一回公判前の、公判前整理手続きの中身というのは、え、秘密にわたるということは法律上決まっているからです。

    江川:だってどこの場所かっていうのくらいは教えたっていいじゃないですか。

    八木宏幸刑事部検事:教えたっていいじゃないかといわれても。

    池上政幸刑事部長:あのー、ですからお答えしますが、いずれ公判廷において証拠に基づいてきちんと立証したいと考えております。

    江川:だって報道では細かいやりとりまで全部出ていますよ。それが正しいのか正しくないのかっていうことぐらい、こういうきちっとした偉い人が出ている平場でちゃんといってくださいよ。

    池上政幸刑事部長:あの、こういう場所でありますからこそ、といいますか、刑事訴訟法の定める手続きにしたがって公判廷でそういったじじつはあきらかにしたいと考えております。

    江川リークはできるけど会見では言えないということですか。

    池上政幸刑事部長:議論にわたりますのでこれ以上は申し上げられません。


     ここから先もずっとキーボードを打ってメモしていたが、集中力が切れてしまった。

     そのためここまで正確なメモはできていないかもしれない。だから今日はここまで。


     録音させてくれてたら全文起こすんだけど。ひらがなじゃなくて漢字入りで。


     いずれにせよ、録音、撮影が許可されるまでは、ずっと記録に残らない『幻の記者会見』ということだ。


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