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    原発事故で被ばくした牛は生かすべきか、殺すべきか

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      ●避難者8万5千人。震災後の非日常は今も続く

       

      東日本大震災から5年半以上が経過しました。この震災で福島県の浜通り地方は甚大な被害を受けました。地震による被害だけでなく、東京電力福島第一原子力発電所で大事故が起き、放射性物質が広範囲にわたって飛散したからです。

       

      震災から時間が経ち、避難区域が徐々に解除されたことで、故郷に戻れた方々もいます。その一方で、いま現在も避難生活を余儀なくされている方々もいます。その数は2016年9月末時点で、県内、県外あわせて約8万5千人にものぼります。メディアの関心がオリンピックや豊洲問題に移っても、震災後の非日常は今も続いています。

       

      私はこれまで浜通りの取材を細々と続けてきました。その内容は、避難生活の問題、避難指示が出る中での選挙の問題、中間貯蔵施設の問題、廃炉の問題、被災した自治体の首長へのインタビューなど様々ですが、その中の一つに、原発事故で取り残された家畜の問題があります。

       

      このテーマについては雑誌などでたびたび取り上げてきました。現在もウェブ上で読めるものとしては、『通販生活』ウェブサイトに掲載されたこちらの記事があります。

       

      ◆「決死救命、団結!」──希望の牧場・吉沢正巳の訴え(前編)

      ◆「決死救命、団結!」──希望の牧場・吉沢正巳の訴え(後編)
       

      この記事は、避難指示が今も続く福島県双葉郡浪江町で300頭を超える牛たちを生かし続ける「希望の牧場」の吉沢正巳さんを取り上げたものです。吉沢さんは原発事故後、市場に出荷されることがなくなった他の農家の牛も引き取り、牛たちを生かし続けてきました。その中には、双葉郡楢葉町で飼育されていた牛60頭も含まれています。

       

      原発事故後、この牛たちは高齢の飼い主に代わって動物愛護団体が飼育を続けていましたが、団体が分裂。分裂後、世話をする人がいなくなった牛たちは殺処分を待つだけになりました。

       

      しかし、殺処分の直前、動物愛護団体の有志から、「自分たちが世話をするので牧場の敷地を間借りさせてほしい」と相談を受けた吉沢さんは、飼育場所として希望の牧場を提供することにしました。その有志は新しい団体を立ち上げ、しばらくの間、牛たちの世話に通っていました。

       

      「牛たちを寿命まで生かす」という終生飼育の考え方は、吉沢さんにも少なからず影響を与えているように思えました。

       

      しかし、今現在、その団体は牛の世話をしていません。そのため吉沢さんが他の牛と変わらない待遇で世話をし、命を繋いでいます。

       

      ●生かすべきか殺すべきか。10月29日(土)13時〜討論会開催

       

      もはや経済的価値のなくなった牛たちを生かし続けることに意味はあるのでしょうか。

       

      動物愛護の観点から、「牛たちを殺さずに寿命まで生かす」と口で言うのは簡単です。しかし、毎日大量に必要になる餌の問題、経済価値を生まない牛たちを生かし続ける人件費など、現実には多くの困難が待ち受けています。

       

      吉沢さんは言います。

       

      「警戒区域内で生き残った牛たちは『原発事故を語り継ぐ生きた証人』だ。被曝した牛たちを生かし続けて血液や尿を調べたり、被曝の実態や生まれてくる子牛たちへの影響を研究したりすることが必要なんじゃないか。それを『国の方針だから』と言って、ただ黙って殺せ? これは原発事故の証拠隠滅じゃないか。おれは牛たちを絶対に無駄死になんかさせない。殺処分の同意書に、絶対にハンコはつかない」

       

      自分のことを「ベコ屋」、「牛飼い」と呼ぶ吉沢さんは、他の農家を批判することなく、牛を生かすために行動してきました。しかし、牧草が自生しなくなる冬の間、牛たちの餌は圧倒的に不足します。餌の運搬費もかかります。出荷による収入が見込めない「希望の牧場」で牛を生かし続けることは、経済的にみれば明らかに破綻に向かって進む道でしかありません。

       

      しかし、300頭の命はどうすればよいのでしょうか。吉沢さんも、吉沢さんを支えてきたボランティアの人たちも、いつも頭を悩ませています。

       

      そんな中、私は「希望の牧場」のスタッフから一本の連絡を受けました。10月29日(土)に討論会を開くので参加してほしい、という依頼でした。

       

      原発事故後の現実、動物愛護の理想と現実、経済原則を超えた思いなど、様々な意見が交わされると思います。しかし、最終的には前を向いて、考え、行動することでしか目の前の命には向き合えないのだと思います。

       

      詳細については、下記「希望の牧場」のブログを御覧ください。会場の座席数には限りがあるそうですが、立ち見も発言も歓迎だそうです。討論会の後には懇親会(予算1000円程度)も予定されています。ご都合のつく方は、ぜひお越しいただければと思います。

       

      ◆「原発事故から5年目、警戒区域の命を考え、行動する徹底討論会」
      日時:10月29日(土)13時〜15時
      会場:渋谷区道玄坂1-22-7道玄坂ピア4F

       

      以上


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